スズキ・ジムニーはSUVとして稀有の存在であることをご存知ですか?
時代はSUV(Sport Utility Vehicle)=スポーツ用多目的車がもてはやされ、各メーカーが色々なモデルを発表していますが、流行廃りというものを横目で見ながら、ジムニーはそのポリシーを46年間に渡り、初志貫徹してきました。
そのため、現在では大変硬派なモデルとして知られることに。
今回はそんなスズキ・ジムニーの魅力を改めて探って行きたいと思います。
ジムニーを取り囲むSUVの歴史
1970年のデビューから数えて46年という長い歴史を持つスズキ・ジムニー。
モデルごとの息がとても長く、フルモデルチェンジは1981年と1998年の2回のみで、現行モデルは3代目ということになります。
過去のモデルでも軽規格と普通車の両方が設定されていましたが、現行モデルでは、660CCの軽規格と、1300CCのジムニー・シエラがあります。
日本国内をメインに話を進めますが、ジムニーがデビューした1970年当時、その先輩格として三菱・ジープ、トヨタ・ランドクルーザー、日産・サファリなどがありました。
この当時は当然ながらSUVという概念はなく、4駆=山道や雪に強い生活の道具、という世間の認識でした。
その中、4駆の利点はそのままに、経済的な軽自動車規格(360CC)でデビューしたのがジムニーがです。
やがて1980年代になると、いすゞ・ビッグホーン、そして一世を風靡した三菱・パジェロがデビューします。
この時のニーズは、今まで自衛隊や林野庁がメイン顧客だった4駆の力強さに世のお父さん達が関心を持ち始め、しかし内装も鉄板で跳ねるように走る車では乗れない、そこで外観は力強く、乗り心地や装備を乗用車に少し近づけた4駆がもてはやされるようになりました。
パジェロがラリーで活躍し、オートキャンプが流行ったのもこの頃です。
1980年代後半になってくると、都会にも似合うスタイリッシュさに人気が集まるようになってきます。
ここで新たな道を切り開いたのが、ジムニーの兄貴分としてデビューしたスズキ・エスクード。
その後、このソフティケーテッド化が進み、トヨタ・RAV4、ホンダ・CR-Vなど、現代のSUVへと繋がっていきます。
そんな流れの中、ソフト路線は兄貴分のエスクードに任せ、ジムニーは脈々と硬派路線を突き進んだのです。
硬派なジムニーが持つ魅力とは
時代に逆らうとも言えるジムニーが、現在も多くのファンを持つ理由は何でしょうか?それは、類まれな悪路走破性にあります。
ジムニーが伝統として守ってきたのは、ラダーフレーム、前後リジッド式サス、縦置きエンジン、ローレンジ付きパートタイム4WDの4点です。
現在では、この4つを兼ね備えた車両はジムニーだけとなっています。この4つを兼ね備えると、大変シンプルで頑丈な車が出来上がります。
シンプルで頑丈ということは、耐久性の良さに繋がります。つまり、壊れずに長く乗れるということですね。
ジムニーの魅力は、この悪路走破性とシンプルな頑丈さによる、道無き道を故障なく走れるという安心感・心強さにあります。
ただ、日本の場合、道路も大変良く整備されているため、現在ではその能力を持て余すほどとなっているのが少し残念ですね。
低価格なのに本格的なオフロード性能
かつて、前後リジッド式サスには、リーフスプリングが組み合わされるのが一般的でした。
ラリーのように高速でグラベル路を走るにはスバル車に代表されるように4輪独立サスペンションが有利ですが、人の足で登るのも苦労するような山道で、ジムニーの本領が発揮されます。
前後リジット式サスは、自由長が大きく設定でき、最低地上高が一定、そして悪路でもボディを平行に保つように働くというメリットがあります。
ただし、リーフスプリングは高速での路面追従性が悪く、乗り心地に悪影響が出るため、ジムニーも2代目モデル最後のマイナーチェンジでコイルスプリングに置き換えられ、現行モデルもこの組み合わせを踏襲することとなりました。
また、シャーシもよく考えて作られており、横から眺めた時にシャーシより下に余計な出っ張りがほとんどない設計となっているのもこだわりの一つです。
そんな本格的な性能を持ったジムニーですが、デビュー当時から引き継がれるもうひとつの特徴として、低価格であるということが挙げられます。
標準仕様の660CC、5MT車で129.6万円、4AT車で140.7万円に設定されており、現在の軽自動車価格帯と比較しても、手頃な価格となっています。
特徴に述べたように、現代では稀に見る本格的4WD機構を搭載していることから、ここはひとつ、本来の性能をより引き出せる5MT車で乗ってみてはいかがでしょうか?