トラック・バスで知名度の高い、いすゞ自動車は、以前は乗用車も製造していたことをご存知ですか?
今回はそんないすゞが製造していた乗用車のフラッグシップモデルであった、初代ピアッツァをご紹介します!
今でも新鮮なジウジアーロ・デザイン
いすゞ自動車は残念ながら1993年に乗用車の生産をやめてしまったので、23年も経った今となっては、その面影も薄れています。
しかし、かつては戦後からベレット、ジェミニ、117クーペといった特徴ある車を世に送り出し、愛されていました。
今回ご紹介する初代ピアッツァ(JR130/JR120)という車は、1981年~1991年の10年間に渡って製造された車種です。
ロータスやランチアといった数々のスポーツカーをデザインしたことでも有名な、イタリアのデザイン会社「イタルデザイン・ジウジアーロ」によるデザインが特徴で、その流礼な2ドアクーペスタイルは、デビュー前のモーターショー登場時に大きな話題となりました。
先代にあたる117クーペもジウジアーロ・デザインであり、その優雅でスタイリッシュな佇まいが共通しています。
ジウジアーロのデザインした車は、トヨタ・アリスト、スバル・アルシオーネSVXなどもそうです。
実は「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で有名なデロリアンもジウジアーロによるもので、これらの車を見比べてみると、確かに似ていると思えてきますね。
ピアッツァは室内も外観に負けず個性的で、ステアリングの両脇にズラッと操作系が並んだサテライト・スイッチにデジタル・メーターというものでした。
ピアッツァの気になるスペックは?
前輪がダブルウィッシュボーン、後輪が3リンク式コイルリジッドサス(一部除く)のFR車でしたが、このシャーシ自体は、初代FRジェミニ(1974年発売)から流用された、当時でも設計の古いものであったという感は否定できません。
これに組み合わされるエンジンは、デビュー当初は直4DOHC1.9リットル (G200WN型)と直4SOHC2リットルの2本立てでした。
1.9リットルという排気量が中途半端ですが、これはジェミニの1.8リットルエンジンをスケールアップしたためです。
NAではパワー不足感があったため、1984年にはインタークーラ付ターボ直4SOHC2リットル(4ZC1)が搭載され、150PSにパワーアップされました。
そして後に、このターボエンジン1本に絞られるようになります。組み合わされるミッションは5MT/4ATです。
モデル後期になってくると、かなり古くなったシャーシへのテコ入れとして、イルムシャー/ロータスが足廻りをチューンした2モデルが販売されます。
イルムシャーの方は走りに徹した固い足廻り、ロータスはしなやかでスポーティといった差別化がなされました。
ちなみにこの時期、いすゞはアスカ、ジェミニ、ビッグホーンの3車種に対しても、同様のチューンを施したラインナップを揃えています。
ピアッツァはどのような乗り味を持っていたか?
古い話ですが、筆者の友人が所有していたイルムシャー・ターボを、未舗装路を含む峠道で1日試乗させてもらったことがあります。
トヨタ・AE86にも似たような(いかんせん重量はありますが)、古典的なFR車が持っている楽しいフィーリングを味わいました。
デザイン重視のロングノーズを持っているため、重量配分は70:30というフロントヘビーです。
そのせいもあってか、未舗装路では綺麗に後輪が流れる走り方を披露し、そのくせターボエンジンはマイルドな性格を持っていたため、イルムシャーの固い足廻りとともにコントロールもしやすいものでした。
車体サイズは今となってはトヨタ・カローラよりも小さめの5ナンバーサイズですが、このように運転を楽しむことができ、今もなお引き立つお洒落なデザインは、現物を目の当たりにしたら、欲しくなってしまう1台かもしれませんね。